花火もアルカリ眼症のリスク!?

T&Aマイナーエマージェンシーコースでは、眼科領域の内容の一つとして眼表面異物を扱っています。その中でも、特に気をつけなければならないと伝えているのはアルカリ眼症です。

アルカリ眼症は、速やかに適切な処置をしないと非常に重症化し、視力を失うリスクがある眼科(超)エマージェンシーの一つです。(有名なアルカリ眼症の原因には何があるか、なぜアルカリが特に危険か、どう対処すべきかはコースを受講してくださいね。笑)

今回は、コース内では取り上げていない、この時期(この記事を書いているのは夏です。)もしかすると遭遇するかもしれないアルカリ眼症の原因について紹介します。

それは花火です。

臨床眼科(Jpn J Clin Ophthalmol.) 2015; 69: 237-41.に症例報告が掲載されていました。

 

家庭用打ち上げ花火の火薬が眼に入ってしまったため受診したところ、実は、眼表面のpHがアルカリ性となっていたという症例です。

 

花火による眼外傷は、①花火・火薬が高温であることによる温度熱傷(いわゆる火傷)や、②花火やその破片が眼にぶつかる打撲傷が有名ですが、実は、花火の火薬にはアルカリ性の物質も含まれているため、化学熱傷(アルカリ眼症)も起こし得るようです。

 

本文献では、火薬が燃焼してできた“炭酸カリウム”が、アルカリ眼症となった原因ではないかと考察しています。

 

うーん、知っていないと厳しい…と唸りたくなる症例です。

今回この知識を得ることができたので、今後は「花火が眼に…」なんて訴えを聞いたら、アルカリ眼症の可能性も想起できるようにしておきましょう。

さらに、それだけに限らず、「まさかこんなものが!?」と思う物質がアルカリ性だったりするかもしれないので、何かが眼に入ったときは必ず、「もしかしたらそれは化学眼外傷の原因になるのでは?」と構えて眼表面pHを測定するクセをつけておくことも重要ですね。

 

注:今回はアルカリ眼症の症例でしたので、アルカリの怖さを強調しましたが、酸性の場合も危険であることには変わりありませんので、同様に、ご注意・速やかに対処いただくようお願いいたします。